アルツハイマー型認知症の進行
アルツハイマー型認知症は緩やかに進行していく疾患です。単純な記憶障害から始まり、徐々に日常生活に支障がでるような認知機能障害が現れ、さらに進むと運動機能も障害され寝たきりとなります。

初期の特徴
記憶障害・見当識障害・実行機能障害
初期は記憶障害から始まり、時間の見当識障害、実行機能障害が特徴です。ほんの数分の間に同じことを何度も聞いたり、直前の出来事をすっかり忘れてしまったりといったような記憶障害が現れます。また、時間の感覚が曖昧になったり、家事の段取りが悪くなったりなどの症状が見られるようになってきます。
また初期では、本人も「何かおかしい」「認知症かもしれない」を自覚している場合が多いのもこの時期の特徴です。今までスムーズにできていたことが、思うようにできなくなったり、周囲から物忘れの指摘を受けたりすることが増え、漠然とした不安を抱えているといわれています。
中期に移行する頃になると、取り繕いと呼ばれる失敗や物忘れの辻褄を合わるための作り話をしたりします。初期に多くみられる行動・心理症状(BPSD)は、被害妄想や意欲低下です。
自立した生活は可能
初期は、記憶障害を中心とした不安や焦りによって精神的に不安定になりやすい時期と言えます。しかし、周囲の理解や支え、必要に応じた介護サービスがあれば自立した生活は可能です。
中期の特徴
日常生活が困難になる
初期では周囲のサポートがあればできていたことも、中期に入ると難しくなり自立した日常生活を送ることが難しくなってきます。記憶障害などに加え、失行や失認などの症状も目立つようになってきます。認知機能障害の悪化に伴い行動・心理症状(BPSD)が強く出やすい時期となります。本人の辛さはもちろんのこと、介護者にとっても精神的負担が強い時期といえます。
初期で感じていた不安や焦りが混乱、怒りという感情に変化していくため、新しい環境への適応も非常に困難となってきます。
中期は、行動・心理症状(BPSD)が1番出現しやすい時期で、暴力や徘徊、興奮などの強い症状が現れやすくなります。
健康状態にも注意が必要
中期では、自分の身体を健康に保つための行動をとることが困難になっていきます。専門職は精神症状だけでなく、精神症状の背景に身体的な不調がないか?ということを気にかけて欲しいと思います。
後期の特徴
寝たきりへと移行
後期は寝たきりへと移行していく時期です。中期にみられていたような行動障害は減っていきます。アルツハイマー型認知症は合併症がなければ身体機能は比較的保持されるのですが、後期になると身体機能は低下します。歩行ができなくなり車椅子やベッド上の生活になります。
言語によるコミュニケーションが困難となり身近な人のことも認識できなくなってきます。排泄はベッド上となり、嚥下障害も出現してくるので経口からの食事摂取も厳しくなってきます。
ケアの視点の切り替え
後期は認知症ケア、というよりは、ターミナルケアの視点が必要です。身体の苦痛を取り除いたり、人生の最期をどのように迎えるか、といったことを考えていく時期となります。
まとめ
アルツハイマー型認知症は、他の認知症や身体疾患と合併をする可能性もありますが、一般的にはゆっくりと進行していく疾患です。認知症の人をアセスメントする際に、今どの時期にいるのか?これからどうなっていくことが予測されるのか?という視点を持つことでケアの先手が打てます。