認知症ケアにおける「不適切なケア」とはどんなケアなのか?

このようなシンプルな質問をいただきました。

今まで普通に「不適切なケア」という言葉を深く掘り下げることなくを使ってきました。以前にも医師から同じような質問を受けた時にうまく答えられなかったことを思い出しました。その頃は自分の当たり前はみんなの当たり前、という恐ろしい勘違いをしていたので「わからないあなたがおかしい」くらいの感覚だったんだと思います(笑)。人によってこの「不適切なケア」という解釈は違いますし、そこを私なりに表現することが自分の責任だと思っているので、改めてこの質問に私なりに向き合ってみたいと思います。

不適切なケアとは

私が思う不適切なケアは、グレーゾーンの真っ白以外、全て不適切なケアだと思っています。こちらの記事をまだ読んでいない方は、先にこちらを読んで頂けると有難いです。

認知症ケアにおける虐待のグレーゾーン

2018.06.17

自分では気づいていない人も多い

不適切なケアは程度の差はあれ、常に行われています。介護家族はびっくりされるかもしれませんが、正直、毎日溢れています。そのなかでも、異常に目立つ人が2割くらいいます。よく「2:6:2」の法則などと言われますが、介護現場でも同じで2割は常に真っ白のケアをする人、6割はグレーの中間あたりをさまよいながら葛藤している人、残りの2割が黒ギリギリのケアを正義だと勘違いしてやっている人、という印象があります。黒ギリギリの2割さん達は、自分のケアが不適切だとは微塵も思っておらず、周りの職員が胸を痛めていることにも全く気がつかずケアをしています。

正義感が間違った方向に行くと不適切なケアになる

以前、「冤罪の背景には強すぎる正義感がある」と聞いたことがあります。認知症の人を怒ってばかりいる専門職も未だにいます。周りのスタッフや上司がいくら注意したり、教育しても全く改善しない人がいます。その人たちのほとんどが、怒ることは本人のため」と本気で信じています。現場ではここが本当ーーーーーに難しいのです。

不適切なケアではないか?確認ポイント3つ

自分がやっているケアが不適切ではないか、確認してみましょう。

1.自分がされて嫌なことをしていないか?

自分がされたら嫌なことは、不適切なケアだと思った方がいいです。強い口調で言われたり、嫌な態度をされたり、望まないことを無理やり強要されたり・・・。やられたら嫌ですよね。今一度、冷静に客観的に自分のケアを振り返って見てください。

「だって危ないから」とか「そうは言っても職員が足りないから」などの、「だって」「そうは言っても」を一度頭から取り除いて、フラットな状態で自分のケアを見つめてください。

例えば、立ち上がろうとしている認知症の人に、「危ないから座ってて!!」と大声で怒る専門職をよくみかけます。理由は我々お得意の転倒予防です。転倒予防という名の自由の剥奪ですけどね。これが自分の立場だったとして、いくら自分の安全を守ろうとしてくれたとはいえ、大声で怒られて「助けてくれてありがとう」と思えるでしょうか?私なら、「他にもっと違う言い方があるだろ!?(怒)」と思うと思います。

2.家族が見ていても同じことをするか?

虐待のグレーゾーンの記事でも書きましたが「家族が見ていても同じことをするか?」という視点で自分のケアを振り返って見てください。

・家族が面会に来ていてもその言葉を使いますか?
・家族が見ていてもその感じで身体介護をしますか?
・家族がそばにいてもその態度で接しますか?

家族が面会に来たら態度がガラッと変わる職員、いつもは無関心なのに家族が来たら急にやたらと優しく話しかける職員、家族が来ていることに気づかす普段通りの乱暴な言葉使いで接していて、慌てる職員、いっぱいいますよね。

24時間365日、いつ家族が側にいてもOK!というケアができていますか?

経験上、グレーゾーンは圧倒的に施設や病院などの“箱物”が多いと感じています。訪問系(独居を除く)や通所は、クリーンなケアをしていることが多いです。私個人の見解ですが、やはり「家族の目」はケアの質に影響します。

ただ、「家族の目」の力が強すぎたり、間違った方向に想いが向かってしまうことで、本人によくない影響が出ることもあります。これについてはいつか別記事で取り上げようと思います。

3.違和感がないか?

私は自分の「違和感」を見過ごさないようにしています。自分のケアでも、「ん?今の声かけなんか変じゃない?」とか「今の私の態度、どうなんだろう?」と違和感があるときは、不適切なケアだったと認めています。グレーゾーンに敏感になってくると、ちょっとしたことに違和感を覚えるようになります。他の職員がやっているケアに対しても同じです。

明らかに不適切なケアだな、とわかるものだけではありません。表面的に見えない部分にも要素はたくさんあります。それが違和感という形で自分に教えてくれます。

関係ないと思う人もいるかも知れませんが、私は自分の職務に必要な知識や技術を身につけることを怠ることも、不適切なケアだと思っています。

虐待の線引きはない

どこからをどこからを虐待だと思うのかは個人でも変わってきますし、事業所の文化や風土、トップの考え方、教育などによってもかわってきます。不適切なケアと虐待の線引きはありません。言い換えれば、不適切なケアは虐待と捉えることもできます。

倫理観の薄い人、倫理観の低い事業所ほど、虐待という言葉をタブーのように扱います。私は逆に、虐待という言葉の現場のなかで普通に使っていくことの方が大切だと考えています。実際にグレーだったとしても「あれは虐待ですよね」とさらりと笑顔で伝えるようにしています。

やっている本人も辛いはず

不適切なケアを心地よくやっている専門職なんていないと思います。最初は罪悪感や違和感があったはずです。今も本当はあるはずです。本当はやりたくないのに、自分は間違っていないと言い聞かせて突き進むことが自分を追い詰めます。自分を大切にするためにも、不適切なケアから卒業する覚悟を決めましょう!

まとめ

この質問をくださった方は、非常にクリーンな職場に勤務されていて、不適切なケアをしたことがない、見たことがない、という人かも知れません。時代は変化してきています。「怒ることは本人のため」という昔の考え方を切り替えていくことで、専門職も楽になってきます。

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