認知症ケアにおける食事介助のポイント・実践編

シリーズでお伝えしている「認知症ケアにおける食事を考える」の4回目です。

1回目「摂食嚥下のメカニズムと解剖をおさえよう!」
2回目「認知症と食事① 認知機能障害が食事に与える影響」
3回目「認知症と食事② 認知症のタイプ別における食事の特徴」

前回までは、「どうして食事に問題が出る?」「何が難しくなる?」を時間をかけて考えてきました。それを踏まえて今回はどのようにケアをしていくかを考えていきたいと思います。最初に伝えておきますが、これが正解というわけではありません。

ヒントとして読んでいただけるといいと思います。

食事の前にここをチェック!

覚醒しているか?

ウトウトしていませんか?

体調不良はありませんか?

辛そうにしていませんか?
痛いところはなさそうですか?

姿勢は適切ですか?

足底は床にしっかり付いていますか?
足首、膝、腰は90度になってますか?

排泄は済ませていますか?

「トイレに行きたい」と訴えている人に「食事が終わってから」などと言ってはいませんか?

まずはここをきちんとクリアしてから次に進みましょう。

認知機能障害に働きかけるケア

記憶障害

アルツハイマー型認知症ではエピソード記憶の欠如というのが特徴で、食事したことを忘れるというのはよくある場面です。私個人の意見としては、食事を忘れても日常生活に問題がなければ気にしなくていいのではと思っています。どうしても覚えていてほしい!と思うのであれば「美味しい!」「楽しい!」などの感情に働きかけることです。

見当識障害

見当識障害が進んでくると、今食べている食事がいつの食事なのか(朝・昼・夜)がピンとこなくなるようです。配膳の時に一言、「朝ごはんです」「3時のおやつです」などと声をかけるだけで見当識に働きかけることになります。

失認・空間認知の障害

・食事を配膳して「食事ですよ」と声をかけても手をつけない場合は、食事だと認識できてない可能性があります。数口だけ介助をして口の中に入れると。自分で食べ始める方もいます。また、品数が多かったり、食事以外のものがテーブルにあったりすると混乱する場合もあります。

品数(お皿の数)が多くて混乱する場合はワンプレートにしたり、コース料理のように1品ずつ出すなども有効です。また食べこぼしがある場合によく使われる介護用エプロンは、なぜか模様が派手なものが多くのその柄が浮き出て見え注意が妨げられる場合もあります。本当にエプロンが必要か?エプロン以外の方法はないか?を考えてみてください。

失行

箸やスプーンの使い方が分かっていないようであれば、持ち方を修正するだけでスムーズに食べられるようになる場合もあります。うまく使えない場合は、手づかみで食べられるおにぎりやサンドイッチなどに切り替えるのもひとつの方法です。

口腔顔面失行

喉をさすったり、冷たいものを提供すると溜め込まなくなることもあります。ここまでくると、現実的に口から必要な栄養を十分に摂ることは難しくなってきます。胃ろうなどの経管栄養との併用も考えていく必要があります。

注意障害

先述した品数の多さやエプロンの柄なども要因のひとつです。他にも、テレビや職員の動きなどによって集中が途切れてしまうことがあるので、環境の調整をしましょう。

場面別の対応

食事開始困難

摂食中断

食べ方の乱れ

口腔体操

食事の前にすることで、誤嚥や窒息の予防になります。また続けることで、口腔領域の機能を維持させできるだけ長く口から食べることを助けます。

唾液腺マッサージ

高齢になると唾液の量が減ってきますし、認知症で抗精神病薬を飲んでいる人はさらに唾液の量が少なくなります。唾液の量が少ないと準備期でうまく食塊を作ることができなくなり、誤嚥や窒息の原因になりますので食前に唾液腺マッサージを行うといいでしょう。

唇の運動

・食べ物を取り込んだり、飲み込むときに唇がきちんと閉じることが大切なポイントになります。唇をすぼめたり、横に引いたりして唇の周りの筋肉(口輪筋)を刺激します。

舌の運動

・舌は食塊を作ったり、咽頭に送る時に大切な役割を果たします。舌を前に出したり、前に出した状態で左右に動かし動きをよくしましょう。

皆さんが現場で行なっているパタカラ体操は、唇や舌の筋肉を鍛えるトレーニングです。

まとめ

前回までの長い説明からしっかり読んでくれた方は、ケアの「何故こうやるのか?」という根拠も一緒に考えてもらえたと思います。先述したように、ここに書いてあることは正解ではありませんが、何かの手がかりになると嬉しいです。次回で最終回ですが、ラストは「食事拒否」について書いていこうと思います。

参考文献

橋下愛著:口から食べるを支える!認知症高齢者の嚥下リハビリテーション,臨床老年看護,vol.22 No.2,P15 日総研出版
山田律子著:認知症の人の食事支援BOOK 食べる力を発揮できる環境づくり,中央法規出版,2013
山田律子著:食事に関する評価とアセスメント 身体機能を中心に,認知症ケアジャーナル第10巻第3号 P246~252 2017.12 ワールドプランニング
松本佐知子著:食べない、異食の要因とケア,臨床老年看護,vol.21 No.4,P59 日総研出版
第7回杉並区医療介護連携研究会 PDF http://www.sgn.tokyo.med.or.jp/carewoker/pdf/renkei_20141011.pdf 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です