多摩大和園第2回地域講演会「地域共生について考える」基調講演レポ

多摩大和園第2回地域講演会「地域共生について考える」

10月7日、多摩大和園第2回地域講演会「地域共生について考える~認知症になっても安心して暮らせる街を目指して」にて、講師として基調講演をさせて頂きました。会場は東大和市にあるハミングホールでした。

タイトルは、「少しの知識と勇気と優しさ」にしました。この言葉は、送って頂いた地域講演会の概要資料に入っていた言葉です。この資料にですね、私、すごく感動したんです。こういうことを地域の方に伝えたい、ということが表面的ではない言葉で書かれていて、暖かい気持ちになりました。

このときに思い出したのですが、個人事業をはじめるときに見よう見まねで作った事業計画書のなかで、キャッチフレーズを考えたときに、「知識×優しさ×熱意」にしたんですよね。初心に立ち返った気分でした。

基調講演

理事長さんのご挨拶、東大和市長さんのご挨拶、からのまさかの私登場(笑)

今回はご家族と専門職が半々くらいだったので、両方の視点でお話できたらいいなと思っておりました。依頼を頂いてから、何を話そうか、何度も内容を練直しました。専門職向けに話すことが多い市村ですので、介護家族や地域住民の方のニーズ調査のようなことをしながら、内容を作りました。

基調講演でお話させて頂いたことをいくつかシェアしたいと思います。

認知症に必要以上に怯える必要はない

認知症に対して良いイメージを持っている人はほとんどいないと思います。確かに病気ですので、ハッピーなエッセンスではありません。ですが、「認知症になったら終わり」ではありません。認知症になっても穏やかに過ごしている人はたくさんいます。

一部の偏った情報に流されず、事実を自分の感覚で確かめながら認知症に触れてほしい、と思っています。

症状=本人が困っていること

「認知症の症状」は、どうしても◯◯ができなくなる、◯◯がわからなくなる・・・といったような表現になります。ですが角度を認知症の人側に変えると、「困っていること」になります。

例えば、いま居る場所がわからなくなるという見当識障害は、認知症の人からみると自分が「いま居る場所がわからなくて困っている」ということになります。

症状を知ることは、その人が困っていることを知る手がかりになります。

「正しいか」よりも「本人にとって幸せか」

パネルディスカッションでご一緒したご家族から、この言葉を聞いて少し楽になった、というようなことを言って頂きました。一般的な「正しさ」は認知症の人、そして周囲の人を不幸にすることがあります。この切り替えができるようになれば、私がずっとこだわっている「お互いが楽になるケア」になっていくと信じています。

パネルディスカッション

後半はパネルディスカッションでした。パネルディスカッションでは、実際に介護をされているご家族を代表してお二人の方が登壇されました。

家族の言葉

個人情報もありますので詳しいことは書きませんが、ご家族が抱える苦悩や葛藤が強く伝わってきました。ひとつひとつの言葉に重みがあり、長い年月のなかで、変化をしてきているというお話もしてくれました。

お二人は「大変です」「苦しいです」という言葉を素直に表現されながらも、そのなかに明るさを見出そうとしている姿に本当に心を打たれました。

そして、ご家族がディスカッションのなかで、「家族が認知症と診断されたときにこのような資料(私が使用した講義資料)が手元にあれば、もう少し違ったかもしれない」と話して下さいました。

ご家族にそのように言ってもらえたことは、私の講義資料が家族にも伝わったのだという意味をもっていたので素直に嬉しかったです。しかし、逆に言えばもっとはやく伝えることができれば、このご夫婦が少しでも気持ちが楽に生活することをサポートできたのではないかと思います。

知識を発信することも役割

私が話した内容は決して特別なことではなく、認知症を勉強している専門職であれば誰でも話せることです。医療や介護、福祉関係の人はなかなか外に発信することが苦手な人が多いと言われています。しかし直接関わることだけが専門職の仕事ではないと思います。自分が持っている知識を、必要としている人に届けるというのも専門職の役割ではないかと考えています。

どんな形でもいいので、家族に選択肢を増やすために発信をしてほしいと強く思いました。

苑長(施設長)さんと話して思ったこと

今回この講演の依頼をくださったやまと苑の千坂苑長さんといろいろなお話をさせて頂けたことも、今回の学びのひとつです。メール等のやり取りで、お人柄はイメージできていたのですが、実際お会いしたら思っていたよりもエネルギーと愛に溢れた素敵な方でした。

講演会への想い、地域住民への想い、地域共生への想い、法人としての役割、人を育てること、職員への伝え方、人に任せる勇気、そしてサポートすること、などたくさんのことを学びました。

やまと苑の見学

講演終了後、特別養護老人ホームやまと苑を見学させて頂きました。インパクトのあるパンダがお出迎え(笑)このパンダさんは地域の方からお借りしているものだそうです。

ここで、改めて法人のパンフレットなどを頂戴しながら理念などを聞かせてもらったのですが、私のなかで“プチ衝撃”がたくさんありました。

私はいわゆる「いい職場」に当たったことがなくて(笑)、そのおかげでフリーランスを選んだので結果としてはいいんですけどね。

「こんな職場あるんですね!」「楽しそうですね!」「すごいですね!」と、素人みたいに素直に感激してました。

離職率の低さ

苑長さんと話しているうちに、完全に面接に来た人みたいな感覚になっていたんですが、聞いていて表面的だけじゃなくて、「ここの施設(法人)本当にいいんだろうな」って思ったんです。本当に面接に来た立場だったら入職したいと思っただろうし、勤めていたら辞めたいと思わないのではないか?と。

思わず、「こちらの離職率って・・・」と聞いたところ、「うちは低いです」と間髪入れずに答えてくれました。ずっと平均して10%ちょいくらいだそうです。20%超えるところもザラにあるこの業界で、この数字はすごいです。「ですよね!」と私も間髪入れずに反応してしまいました。

ブレない理念と巻き込む力

こちらの施設(法人)の素晴らしさは今回短時間で伺っただけでもたくさんあったのですが、そのなかでも他の施設と比較して頭3つ分くらい抜けてるなと思ったのが、周りを巻き込む力です。かなりの人数のボランティアとの協力体制や、家族を巻き込み協力してもらう体制などがしっかりしていて、任せるところは任せる、というスタンスが明確で入るボランティアや家族もやりやすいだろうなと思いました。

まとめ

まだまだ書きたいことはあるのですが、かなりの長文になってしまったのでそろそろ終わりにします。

最後に、「認知症になっても安心して暮らせる街」・・・それは認知症の人を変えることではなくて、周りが冷静に受け止めて、専門職、家族、地域住民、それぞれの立場で自分たちができることを探して生活していくことではないかと私は考えます。