私が感じた認知症ケアにおける時代の変化

今年も昨年に引き続き、セミナーや講演、書籍や雑誌の記事など、様々な方法で認知症ケアについて発信してきました。

「専門職向けに専門職の立場から話す」というのが私の立ち位置ですので、私の立場からこの1年で感じたことを振り返って行きたいと思います。

時代が変わってきている

パーソンセンタードケアに感動した時代はもう終わり

3年前くらいから感じていたことですが、今年はとくに強く感じたのが認知症ケアが新しい時代に突入しているんだな、ということです。

パーソンセンタードケアとか、偉そうに語る時代はもう終りに近づいているのだと思います。私が認知症ケアを専門にしようと勉強しはじめた10数年前は、専門職でも「どうせ認知症だから何もわからない」と思っている人が大半でした。

とくに精神科病院の急性期認知症治療病棟に勤務していた頃は、本人をアセスメントすることなく『認知症の人は身体拘束』が当たり前の時代でした。

ですので、パーソンセンタードケアという概念を初めて知ったときは、「やっぱりそうなんだ!認知症の人でも本人が中心でなければだけなんだ!」と、とても感動したのを覚えています。

パーソンセンタードケアなんて当たり前の時代

でも、最近この業界に入って、きちんと教育を受けている人にとってはパーソンセンタードケアが当たり前すぎてこの言葉や概念を聞いてもピンとこないのではないでしょうか?

それでいいんです!そうでないと日本の認知症ケア、やばいです!(笑)

パーソンセンタードケアは大切な概念です。勘違いしてほしくないのは、パーソンセンタードケアの概念が古いのではなく、“パーソンセンタードケアを偉そうに語るのが古い”ということです。この仕事やるならば、当たり前に資質としてこの概念が備わっている状態であってほしいですよね。

二極化してきている

先述したことに早速矛盾してしまうのですが(笑)、先に書いたパーソンセンタードケアが当たり前になってきているような人が増えているなかで、未だにパーソンセンタードケアを理解しようとしない軍団がいます。理解できないのではなく、理解しようとする気がない人たちです。

冷たいようですが、私はこういう人は他の仕事に就いてもらった方がいいと思っています。そのためには職場全体の倫理観をできる限り白に近づけて、その人たちが居心地悪いと感じる環境にすることが1番手っ取り早いと私は思っています。

このような、いわゆる認知症ケアの発展の足を引っ張る人たちと、認知症ケアの質を上げていこうと専門性を発揮していこうとする人とも差がどんどん開いてきている印象を今年はとくに強く感じました。

発信する立場として

時代の変化にアンテナを立てる

発信する立場として気をつけたいと思っているのが、時代の変化、ニーズに沿った発信がしたいと言うことです。

これは自分の考えを変えていくということではなく、発信の形を変えていくということです。私の理念は『認知症の人が不利益を受けない社会をつくる』です。この理念に添いながら、必要としている人に情報が届くように試行錯誤をしていきたいと思います。

そのために、専門職の立場だけでなく、色々な視点からの認知症についての情報にアンテナを立てていこうと思います。

認知症看護認定看護師じゃなくなって

今年から「認知症看護認定看護師じゃない私」で活動となりました。認定看護師じゃなくなったことで、発言が本当に自由になりました!正直セミナーでも「認定看護師だったらこれは言えなかったな」と思うことがたくさんありますし、ブログでも「認定看護師だったらこれは書けなかったな」と思うことがたくさんあります。

私の知らないところで認定看護師じゃなくなったために減った仕事があったのかもしれませんが(笑)、全く後悔なしです!

まとめ

認知症ケアの時代が変わってきているなかで、私も変わっていかなければならないと感じた1年でした。変えていくことは言う程簡単ではないですが、変えたいときに変えられるのが個人でやっている私の強みです。来年もたくさんの気づきを情報として皆様にお伝えしていきたいと思います。

今年ブログを読んで下さった方々、本当にありがとうございました。
そして来年もどうぞよろしくお願いします!

1 個のコメント

  • 文章、動画、拝見しました。共感する部分が、少なからずありました。「時代」(やや曖昧ですが)の変化のスピードが加速し、「自身を常に見極めていないと」取り残される、或いは、「時代の流れ」とは別な次元で活動(発信)している、そのような状態に気づき、焦ったり、困惑したり…そんな一年でした。仰る「二極(分化)」も感じます。ただ、淘汰や排斥と云う観点では、少し意見が違うかもしれません。また、細かい点では、先生と異なるとは思いますが、私も全国からお声掛け頂き各地に伺う度に、介護や援護に対する考え方や姿勢に関する「地域ごとの違い」(何と何を比較して「差」とするかは難しいので、地域差とは言いません)は、非常に強く感じます。だらだら駄文長文になり申し訳ありませんが、同じ様な感覚を共感できて嬉しく感じたことと、それを踏まえ、これ迄以上に「自分自身を見つめ、自身が変わる勇気が大切だ」と気づかせて頂いたことの感謝をコメントさせて頂きました。ありがとうございました。良い年をお迎え頂き、来年も益々のご活躍を期待しています。