専門職だからこそ読んでおきたい本『ムリなくできる親の介護』工藤広伸さん新刊

新しい時代の認知症ケアシリーズの途中ですが、今日は工藤広伸さんの新刊『ムリなくできる親の介護(日本実業出版社)』をご紹介したいと思います。

いよいよ12/20(木)「ムリなくできる親の介護」全国書店の店頭に並びます!

作家/ブロガーである工藤さんとは数年前に認知症オンラインで知り合いました。工藤さんは介護家族、私は専門職と立場は違うのですが、認知症に関する情報量や介護家族ならではの経験値などが専門職と関わるだけでは全く気付かなかった視点があり、仲良くさせて頂いています。

またお互いフリーランスという働き方をしていることもあり、働き方や考え方、ブログの書き方などいつも相談に乗ってもらっています。

今日はそんな工藤さんの4冊目の書籍を勝手ながら専門職である私の視点でご紹介させて頂きたいと思います。

本の内容

本の構成は次のようになっています。

第1章「親が倒れた! 」最初に何をすればいい?
第2章「親が認知症に! ?」認知症介護で気をつけること
第3章「プロにまかせてよかった! 」1人で背負い込みすぎずにラクになるサービスの数々
第4章「仕事を辞められない! 」遠隔地からでも介護をする方法
第5章「忙しくて時間がない! 」ツールを活用して介護をラクにさせよう
第6章「それでも介護のために仕事を辞める! 」介護離職の心得
第7章「できることはやった」、そう思える幸せな看取り方

工藤さんのブログの「こんな方にオススメ」には専門職は入っていませんが、私は特に在宅介護に関わる職種(ケアマネ、訪問サービス・通所サービス・包括などの専門職)には絶対読んでおいた方がいい本だと思います。

その理由は次からお伝えしていきます。

制度に関して非常にわかりやすく教えてくれている

前回のブログでは、こちらの本のキャッチコピーを紹介させて頂きました。使える制度は使う、頼れる人には頼る、便利なツールは試す!です。

これ、本当ーーーに大切なことです!でも、専門職でも(私を含めて)制度を知らない人が多いのが現実です。もう10年以上デイサービスで働いているのに、「ケアマネが何をする人なのかわからない」「介護保険がわからない」と言っている職員もいます。その時は驚いたのですが、自分の仕事に直接的に関わらなければそんなものなのかもしれません。

ですが、専門職は本人や家族に情報を提供することも役割です。私もケアマネの資格は持っていても実務はしていませんので、色々なものを読んだり教えてもらったりしながら情報を得ています。

この本には、介護家族がどんな制度を必要としているのか、どんな制度を受けることができるのか、などが書かれていますし、成年後見制度や介護カフェ、介護保険外サービスについても具体的にわかりやすく教えてくれています。

専門職と一般人の介護への想像力の違い

医療や福祉、介護の仕事に携わっている私たちは、当たり前ですが介護現場の実際を知っています。なので、つい「なんでこんな状態なのに〇〇しないの?」とか「どうしてもっと早く〇〇しなかったの?」と自分たちの当たり前の基準で家族の判断に疑問を持ってしまうことがあります。

私たちは、見たことがあるから想像できるんです。(それでも、実際に家族の介護もしている専門職は「仕事と家族の介護は違う」と口を揃えて言いますが)
こちらの本では、なぜ当事者意識を持てないのか?ということも書かれています。また、一般の人の介護や親の老いに関する感覚や考え方も紹介されています。どのようなことを家族(一般の人)に伝えておくと、認知症の発症に早く気付くことができるのか、などのヒントを見つけることができます。

事実と主観のバランス

工藤さんの本やブログが、なぜこんなにわかりやすく、またたくさんの人に読まれているのかと私なりに分析すると、文章がうまいのは当たり前なのですが、文章や内容のバランスが絶妙だということです。(私のように「私が思う〜・・・」ばかりではありません。。)理論的なデータや数字できちんと事実を提示し、そこに工藤さんの経験や考え方が合わさって、「なるほど〜!!!」となるわけです。

現場が長い専門職は自分の感覚だけに頼ってしまう傾向があります。また言語化が非常に苦手です。でも、それを他者に伝えるときには自分の主観だけでは人を動かすことはできません。

この客観的なデータと工藤さんの経験などの主観的なデータのバランスが、飽きさせず最後まで一気読みさせてくれるんだと思います。(あ、私、一気読みでした 笑)

その他、私が面白いと思ったキーワード

このままの流れでいくと、ものすごい長文になってしまいそうなので、私が個人的に「面白かった!」と思うキーワードをいくつかご紹介します。

・「お金のある介護」と「お金のない介護」(P45〜
→両方を経験した工藤さんならではの内容で、改めて私自身も考えさせられました。。。

・男性介護と女性介護の4つの分類(P67〜)
→一般的な男性介護と女性介護という性別で分けるのではなく、「自分が男性っぽいのか女性っぽいのかを性格や価値観で判断する時代」とのこと。ちなみに私は「女男タイプ」のようです。

・日常生活に現れる認知症の7つのサイン(P84〜)
→専門職が読むようなものよりもずっと身近な具体例で、なるほどーと勉強になりました

・介護と仕事を両立させるために心がけること(P127〜)
→「何を知っているかではなく、誰を知っているか」「介護は情報戦」、これは本当に重要だと思いました。

・いいプロの見分け方(P153〜)
→自戒も込めて・・・。専門職は必読ページ。

・キャリアを小休止する3つのメリット(P169〜)
→この視点があれば、この先仕事を思うようにできない環境になったとしても、焦らずに進んでいけると思いました。

・固定電話の驚くべき4つの機能(P195〜)
→実家の固定電話って必要かな?と考えていましたが、必要だということがわかりました!

・「予期悲嘆」のプロセスを経たほうがいい(P279〜)
→“ピンピンコロリが残された家族にとっては酷なものかもしれない”、実際見てきて私も思います。

働き方についてのヒント

最初にも書きましたが、私と工藤さんはフリーランスという共通点があります。第6章は2回の介護離職からフリーランスとしてブロガーから作家になり、遠距離介護を続けながら全国各地で講演をされている工藤さんならではの働き方のヒントが詰まっています。

最近は、「副業」ではなく「複業」という言葉をよく聞くようになりました。(こちらの本では複数の肩書きを持つ「スラッシュキャリア」という言葉も紹介されています。)

工藤さんも書かれていますが、今後ますます働き方が変わってくると予測されます。もっと自由に働く専門職も増えてくると思います。この先、組織に縛られず自分だけの働き方を見つけたいという方には特にオススメの内容です。

本を購入すると無料PDFがもらえます

本を購入すると、無料PDFのダウンロードができます。無料でもらっていいのかというボリュームで驚きました。(書籍に換算すると約60ページのボリュームだそうです!)

番外編

YouTube『認知症なんでもTV』

本でも紹介されていますが、工藤さんは『認知症なんでもTV』というYouTubeチャンネルでMCをされています。喋る工藤さんがみれます。

私はとくにこの長尾和宏先生との対談シリーズが好きですが、他にも様々な情報を教えてくれています。

まとめ

専門職のなかに、介護家族が書いたもの(本・コラム・ブログなど)を軽視する人がいます。厳しい表現かもしれませんが、そのような専門職のほとんどは視野が狭く、自分本位のケアをする人が多いです。自分の役割を磨いていくには、自分の知らない世界を知ることが専門職としての役割だと考えます。

2 件のコメント

  • いつもありがとうございます。

    お師匠様の本紹介(書評)は、お金になるレベルだとおもいます。

    想像力は人の持つ最大の特徴・武器です。さっそく購入しました。

    感謝

  • 毎回、ブログを楽しみにしています。職場のパソコンのディスクトップにも、貼り付けて、職員も見れる様にしています。