日総研セミナーでの質問シリーズの続きです。今回で最後になります。
最後は、複数の方から頂いた排泄に関してのご質問から、頻尿(尿意を何度も訴える)についての私の考えをお伝えいたします。
※当日会場でお答えさせて頂いたご質問は省略させて頂いていますので、ご了承ください。また複数のご質問を頂きました方は全てにお答えできていない部分もあるかと思いますが、そちらもご了承下さい。
あくまで私の回答ですので、正しいわけではありません!また状況がはっきりとわからない部分でのお答えとなっていますので、参考程度に聞いていただければと思います。

グレーゾーンのケアのなかでも、何度もトイレに行きたいと訴える人に「さっきも言ったでしょ」と言ってしまう、というのはよく聞く話です。
誰のために、何をどうしたいのか?
まずここで整理をしておきたいことがあります。
頻尿について
①患者・利用者のからだを心配しているのか?
②自分たちの仕事が大変になることが嫌なのか?
ということです。
ここを混同させてしまうと、複雑になり解決の糸口が見えにくくなります。
目標をどこにしたいのでしょうか?誰のために、何をどうしたいのか?まず。ここを考えて欲しいと思います。
うまくいく対応を教えて欲しい、という方が多いのですが、うまい対応ってなんなんでしょうか?尿意の訴えがなくなって自分たちが楽になることですか?
厳しい言い方ですが、対応について考えるときに自分目線(介護者側)を中心に考えていると、観察の視点が変わり、サインに気づけないことがあります。
本当の意味で患者・利用者目線で観察すると、介入できるポイントが見えてくるかもしれません。
身体面での可能性
冷静に考えて欲しいのですが、頻尿は精神症状ではなく、排尿障害です。
膀胱炎などの尿路感染症によるもの
認知症である前に高齢者である、ということを改めて確認しておきましょう。高齢者は免疫力が下がることは知っていますよね?これは免疫細胞の活性化が弱くなることなどが原因ですが、このような免疫力の低下によって感染しやすい状態になります。
高齢者が熱を出すと、まずは肺炎か尿路感染を疑うくらい尿路感染はよくみられます。このようなはっきりとした熱が出るタイプではないものも隠れていると思われます。例えば発熱はなく膀胱炎の3兆候(排尿痛、頻尿、残尿感)が持続的にあるような慢性膀胱炎があります。
前立腺肥大や、バルンカテーテル留置、糖尿病、エストロゲンの低下、そして次に説明する神経因性膀胱なども関係しているといわれています。
また、細菌感染でも神経因性膀胱でもない、間質性膀胱炎というものもありこちらは、膀胱粘膜の問題で起こる膀胱炎です。このタイプの膀胱炎も頻尿になります。
このようなことが関係しているかもしれません。
神経の問題
排尿は膀胱だけが担当しているわけではなく、脳やさまざまな神経によってコントロールされています(詳しくは動画を確認してください)。こちらの記事でも書きましたが、認知症は脳の病気でとくにアルツハイマー型認知症は大脳皮質の神経細胞が死滅してしまう病気です。
排尿反射(排尿のメカニズム)にも大脳皮質が関わっていますので、このことが原因で排尿のメカニズムに異常が出ていることが考えられます。このような神経の不具合で膀胱が過敏になるような病気を神経因性膀胱といいます。
(過活動膀胱、神経性膀胱炎、という診断名の方もいます)
尿失禁や頻尿が特徴的な症状です。
神経因性膀胱は認知症や、脳梗塞、パーキンソン病なども原因といわれていますので、このようなことが原因となっている可能性があります。
オムツなどの化学繊維への反応
化学繊維に対しては、はっきりとしたメカニズムを調べることができなかったのですが、以前に東洋医学を専門に似ている先生から、紙おむつなどの化学繊維が原因で膀胱が過敏になる人がいると聞いたことがあります。
このようなことも可能性としては考えられます。
動画
まとめ
認知症の頻尿にはさまざまな原因が考えられますが、身体面によるものが大きいと考えています。病気によるものが大きいので、そこも含めて主治医と相談していくことも大切です。実際に内服薬で改善した例もよく聞きます。動画でも話していますが、身体(神経や膀胱)の問題なので、「トイレに行ったことを覚えておいてもらおう」とか「さっきもトイレに行ったことを納得してもらおう」とか、関わり方だけの問題ではありません。
いつも言っていますが、認知症のBPSDには身体面の影響がとても大きいです。「心と心が通じ合えば」というのも大切ですが、全てがそれで解決できるわけではありません。
認知症は脳の病気、神経の病気です。最近、ここを理解していないからケアが辛くなってしまうのかなーと思うことが多かったので、これからは少しマニアックになりますが、神経・細胞レベルでの認知症の理解などを記事にしていこうかなと思っています。
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