認知症専門ナースケアマネ 市村幸美(いちむらさちみ)【ゆるらく認知症ケア】
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こんにちは、市村です。昨日、現場で記憶障害とうまく付き合っているなーと感じた認知症の人との出来事がありました。今日は記憶障害の説明を絡めてその出来事をご紹介します。
アルツハイマー型認知症の記憶障害
エピソード記憶の障害
アルツハイマー型認知症では、記憶障害が主症状で、その中でもエピソード記憶の障害が目立ちます。エピソード記憶とは、時間や場所などが限定される個人の出来事のことです。例えば“朝ごはんを食べた”とか“お風呂に入った”とか“家族が面会に来た”というような記憶です。このようなエピソード記憶がすっぽり抜け落ちるのはアルツハイマー型認知症特有と言われています。
ヒントがあっても思い出せない
記憶障害は初期からはじまってきます。その際、家族が「さっきご飯食べたでしょ!」などと指摘をすると大抵は「そんなことはない!」と怒る方がほとんどです。この場合、完全に記憶が抜け落ちているのでヒントがあっても全く思い出せないのですが、ここを知らないとつい「ほら、卵焼きが甘くて美味しいって言ってたじゃない!」などと思い出させようと頑張ってしまいます。そうなると、押し問答となり険悪なムードになっていきます。。
忘れてしまったものはしょうがない
ショートステイの現場でも、このような場面は日常茶飯事です。私はどのように対応しているかというと、、、「えーそうなんだーー」です(笑)。市村お得意のゆる対応(笑)もう忘れてしまったものはしょうがないし、思い出すことはできないし、思い出させる必要性も感じられないし、もっと言えば思い出したところでさほど歓喜にはならないと思うので。
記憶障害を受け止める人もいる
ここで昨日の出来事のご紹介です。
①覚えていないけどOK
私がいつも通り午前中にバイタルサインを測りにいった際、話の中で

と聞いたところ

と(笑)
②忘れちゃうから予防策
そしてもうお一人ご紹介
フロアのテーブルにハンカチを置きっぱなしでトイレに行こうとしたので

と聞いたところ

私トイレに行くと、自分がどこに座ってたかすぐに忘れちゃうのよ。だから、わざと置いていってるのよー
とのこと。
こうやって、認知症の人なりに今の自分と向き合って、自分らしい受け止め方を模索しているんだなーと思った出来事でした。
まとめ
私はよくセミナーでも言うのですが、基本的にあまり介入しません。イチャイチャすることはあるけど、「助けてあげよう!」という感じはありません。それは認知症の人も、自分のなかで折り合いをつけて進んで行く力を持っていると知っているから。私が変に介入すると逆におかしな方向に行ってしまうこともある、というのもありますが(笑)
著書『心が通い合う認知症ケア』(日総研出版)
http://www.nissoken.com/book/1854/index.htm