アルツハイマー型認知症の特徴・症状・経過

アルツハイマー型認知症とは?

認知症の中で一番多いのがこのアルツハイマー型認知症です。認知症全体の半数以上を占めます。アルツハイマー型認知症は、脳に「アミロイドβ」という普通であれば身体の外に排泄されるはずのタンパク質が、何らかの理由でたまることによって神経細胞が死んでしまい脳が萎縮します。

アルツハイマー型認知症の特徴的な症状

記憶障害

アルツハイマー型認知症の最大の特徴は、記憶障害です。アルツハイマー型認知症では、とくにエピソード記憶という時間や場所が限定される個人の記憶が障害されるのが特徴です。

実際にはすでにやっていることでも

ご飯食べてない
薬飲んでない
お風呂に入っていない

というような状況になります。

記銘力の障害

アルツハイマー型認知症の場合、物忘れというよりは、“そもそも覚えていない”場合がほとんどです。記憶は記銘→保持→再生という流れがあり、アルツハイマー型認知症の場合は記銘力が低下するといわれています。記銘は「覚える」ということなので、覚えられないというのが特徴です。私たちも物忘れをすることはありますが、それは一度覚えたはずのことを思い出せないという再生障害です。私たちの物忘れとアルツハイマー型認知症の物忘れは全く違うものだということを知っておいた方がいいですね。

逆行性健忘

「認知症の人は昔のことはよく覚えている」といわれますが、これは逆行性健忘といわれるものです。

上の図のように、近い記憶から失われていくのが特徴です。

もう息子さんが60歳を超えているのに

息子が学校から帰ってくるから帰ってご飯の支度をしなきゃ!

と言ったり

もう退職をして何年も経つのに

仕事に行く!

と言って家を飛び出したりするのはこのためです。

このような言動から、今どの時期を生きているのか?を探るヒントになります。

社交性がある

他の認知症と比べると、社交性が保たれるといわれています。「取り繕い」という、これもアルツハイマー型認知症によくみられるものなのですが、実際は覚えていなくても知っているかのように振る舞う傾向があります。

例えば、実行機能障害によって料理が作れなくなっている状況でも

私のできるんだけど、お嫁さんが私のことを気遣ってなんでもやってくれるのよ

と言ったりします。

これは現場でもよくみられる場面ですが、これは決して「嘘をつこう」などと思っているわけではなく、周りの人とうまくやっていきたい、という場の空気を読んだ行動でもあると私は感じています。

経過・予後

緩やかに発症し、進んでいく

アルツハイマー型認知症は緩やかに発症するので、いつ発症したかがはっきりとわからないのが特徴です。既往歴に「平成◯年〜アルツハイマー型認知症」と記載されていても、そこが発症ではなく、診断がついたとき、治療が開始になったとき、という意味です。専門職はここを勘違いしないようにしましょう。診断をしている医師に聞くと、家族がおかしいと思ったときには発症から数年経っていることが多いそうです。進行も緩やかで、少しずつ進んでいきます。昔は予後は8年〜10数年といわれていましたが、今はもっと長くなっている印象です。

身体機能は比較的保たれる

合併症がなければ、アルツハイマー型認知症の場合は身体機能は比較的後期まで維持されます。排泄の場面では、尿意・便意は保たれますし、食事の場面では嚥下機能も後期まで保たれます。現場で、歩行が困難になってもトイレ誘導を行えばトイレで排泄ができたり、寝たきりの状態になっても経口摂取ができたりするのはアルツハイマー型認知症の特徴です。脳血管性認知症やレビー小体型認知症ではアルツハイマー型認知症と比較すると早期にこのような機能は低下する傾向にあります。

まとめ

アルツハイマー型認知症は認知症のなかで最も多く、医療・介護の専門職であればアルツハイマー型認知症の方と関わることは日常茶飯事になっていくと思います。ポイントを押さえておくと、アセスメントがしやすくなり気持ちにゆとりを持って関われるようになるはずです。

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