こんにちは ブルーベル代表 市村幸美です。
前回は行動障害型前頭側頭型認知症の病態について整理しました。

今回の記事では、臨床症状についてまとめていきます。
行動障害型前頭側頭型認知症の臨床症状
記憶障害は軽度
行動障害型前頭側頭型認知症では海馬の萎縮が軽度なので、記憶障害は軽度です。
衝動や感情を抑えることができない
前頭葉の働きのひとつに衝動を抑えて理性的な行動をとるといったものがあります。
そのため前頭葉の障害によって衝動を抑制することが難しくなり、本能のおもむくままに行動するようになります。脱抑制と呼びます。
ここがこのタイプの認知症の最大の特徴であり、家族やケアする側にとって最大の苦悩になる部分だと感じています。
急に怒り出したり、集団で何かをしている際におもむろに立ち上がってどこかに行ってしまったりなど、THE自由人といった感じです。

違法行為を行うこともあり、「万引き」や「交通ルールの無視」などは難しい課題です。
時刻表的生活
決まった時間に決まった行動をします。
融通が効かず、台風のような激しい天気でも外を長時間散歩したり、洗濯するものがタオル1枚だったとしても決まった時間に洗濯をしたりします。
この行動を妨げると、めちゃくちゃ怒ったりします。

同じ行動や動作を繰り返す
常同行動ともよばれる症状です。
・歩き続ける
・同じ言葉を言い続ける
・同じ食べ物を食べ続ける
などがあります。
昔関わった患者さんでは、病棟内に掲示してある献立やポスターの文字をひたすら読み続けていました。
関心の低下
周りの人や物事、自分自身に対して無関心になります。周りの人が何をしていようと自分には関係ない、という感じです。
また自身の整容に対しても関心がなくなり着替えをしなくなったり、お風呂に入らなかったりするようになります。
うつ状態ではなく、アパシーが多いです。うつとアパシーの違いはこちらから↓
食行動の異常
このタイプの認知症では高確率で食行動の変化があります。
・初期では食欲が亢進する
・甘い物や味の濃いものを好む
・決まった食品しか食べなくなる
などです。
糖尿病や高血圧などにつながることも多いです。

アルツハイマー型認知症より進行がはやい
若年発症ということが関係するのかは、定かではありませんが、アルツハイマー型認知症と比較すると進行が早いと言われています。
・
ここまでが行動障害型前頭側頭型認知症になります。
ケアする人が忘れてはいけないことがあります。
それは
病気がこのような行動をとらせている
ってことです。
前頭葉の機能が悪くなっているから、こんな行動をとってしまうだけです。
このことがわからないと、ただの自分勝手な困った人ってことになってしまいます。
ここは忘れずにいきましょうね。
次回は意味性認知症についてです。
では、またーーー
【参考文献】
・祖父江 元、池田 学、中島 健二監修:前頭側頭葉変性症の療養の手引き、平成 28 年度厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業) 「神経変性疾患領域における基盤的調査研究」班
・池田学:『前頭側頭葉変性症の臨床』老年期認知症研究会誌、vol19 No5 2012
・認知症の医療・介護に関わる専門職のための 「前頭側頭型認知症&意味性認知症」こんなときどうする! 発行 大阪市福祉局高齢者施策部高齢福祉課
・祖父江 元、池田 学、中島 健二監修:前頭側頭葉変性症の療養の手引き、平成 28 年度厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業) 「神経変性疾患領域における基盤的調査研究」班
・池田学:『前頭側頭葉変性症の臨床』老年期認知症研究会誌、vol19 No5 2012
・認知症の医療・介護に関わる専門職のための 「前頭側頭型認知症&意味性認知症」こんなときどうする! 発行 大阪市福祉局高齢者施策部高齢福祉課
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