認知症と食事②認知症のタイプ別における食事の特徴

シリーズでお伝えしている「認知症ケアにおける食事を考える」の3回目です。

1回目「摂食嚥下のメカニズムと解剖をおさえよう!」
2回目「認知症と食事① 認知機能障害が食事に与える影響」

認知症の人が皆同じような問題が起こってくるわけではありません。今回は認知症のタイプ(種類)別で説明をしていきます。

脳と嚥下

その前に嚥下反射がの脳のどこが担ってくれているのかを確認しておきましょう。

言うまでもなく、自作のイラストです(笑)。前回の解剖よりは可愛く描けたと思っています。

嚥下反射は、1番内側にある脳幹が担当しています。詳しく言うと、脳幹の中にある延髄という場所です。延髄は呼吸や血圧など生命維持に直結する大切なところです。

アルツハイマー型認知症の場合

アルツハイマー型認知症の場合は「先行期」や「準備期」の障害から出現してきます。

記憶障害や集中力の低下、失認や失行と呼ばれるものが背景になっています。アルツハイマー型認知症の場合は、他の病気との合併症がなければ摂食・嚥下機能は後期まで保たれることが多いという特徴があります。

ですが認知機能障害の影響により自力摂取に障害が出てきます。中期以降になると、失行や失認の出現により箸やスプーンなどを上手く使うことができなくなったり、食事だと認識できなくなったりと言った障害が出てきます。また集中力が低下し途中で食べるのをやめてしまうことも多くなります。

脳血管性認知症やレビー小体型認知症と比べると、後期まで食事に関する能力が残るアルツハイマー型認知症ですが、後期になると、口腔顔面失行によって口の中に溜め込んで飲み込むことができなかったり、口を開けないなどの状態になります。進行によって脳の神経細胞の障害が広がると嚥下障害も起こってきます。

アルツハイマー型認知症の場合は、先に食べるの行為の障害から始まり、その後で口に入ってからの機能障害が起こってきます

食べる行為の障害:食べ始めない、食べこぼし、食器をうまく使えないなど
口に入ってからの機能障害:むせ、口の中への溜め込みなど

脳血管性認知症の場合

脳血管性認知症の場合は、脳のどこに病変があるのかにもよりますが、食事摂取に何らかの障害をもっている方が多いです。

脳梗塞の後遺症で麻痺がある場合は姿勢を保つことが難しくなることがあります、箸やスプーンをもつことが難しい場合は「準備期」の障害があります。また口や喉に麻痺が残ってしまった場合は「口腔期」「咽頭期」の障害があります。

※嚥下障害の3〜4割は脳血管疾患が原因といわれています。

レビー小体型認知症の場合

レビー小体型認知症はアルツハイマー型認知症、前頭側頭型認知症と比較すると早期から嚥下機能の低下が出現しやすい傾向があります。

また日内変動の影響で時間帯によっても食事の行動が変わることもあります。空間認知の障害によって距離感がうまくつかめなかったり、箸やスプーンが歪んで見えたりすることがあります。

また幻視や幻覚などの症状が食事に影響を与えることがあります。(虫が入っている・・・など)。パーキンソン症状が強い場合は手の震えによって箸やスプーンで食べ物をスムーズに口に運べないことがあります。

 ドパミンとサブスタンスPについて

嚥下反射や咳反射と関わりが深い物質に、ドパミンサブスタンスPというものがあります。脳血管障害が起こると、このサブスタンスPが作られにくくなるため、脳血管障害では嚥下障害が起こりやすくなります。

またパーキンソン病ではドパミンを作る神経細胞が減少します。ドパミンはサブスタンスPを作ることに関係しているため、パーキンソン病の場合も嚥下障害が起こります。レビー小体型認知症とパーキンソン病は関係が深いので、レビー小体型認知症は他の認知症と比較して嚥下障害が出やすいのはこのためです。

【ACE阻害薬】

嚥下障害の治療にACE阻害薬が使われることがありますが、それはサブスタンスPを分解する酵素の働きを阻害することを目的としています。

前頭側頭型認知症の場合

前頭側頭型認知症では、前頭葉の萎縮による脱抑制などによって、初期では食事そのものよりも食事習慣の変化が起こります。

また食事の途中で立ち去るなどの行動が見られることもあります。進行するにつれて「準備期」「口腔期」にも障害が出てきます。前頭側頭型認知症の場合は、アルツハイマー型認知症と同じように他の疾患がなければ咀嚼・嚥下機能は比較的保たれます

まとめ

第3回目、いかがでしたでしょうか?ざっくりまとめると、アルツハイマー型認知症と前頭側頭型認知症は(合併症がなければ)嚥下機能は比較的保たれる、脳血管性認知症とレビー小体型認知症は嚥下障害がお起こりますい、となります。参考になれば嬉しいです。次回は食事の場面別で認知症と食事を考えていきたいと思います。

参考文献

橋下愛著:口から食べるを支える!認知症高齢者の嚥下リハビリテーション,臨床老年看護,vol.22 No.2,P15 日総研出版
山田律子著:認知症の人の食事支援BOOK 食べる力を発揮できる環境づくり,中央法規出版,2013
山田律子著:食事に関する評価とアセスメント 身体機能を中心に,認知症ケアジャーナル第10巻第3号 P246~252 2017.12 ワールドプランニング
松本佐知子著:食べない、異食の要因とケア,臨床老年看護,vol.21 No.4,P59 日総研出版
第7回杉並区医療介護連携研究会 PDF http://www.sgn.tokyo.med.or.jp/carewoker/pdf/renkei_20141011.pdf 

1 個のコメント

  • ありがとうございます。認知症はいずれむきあわなくてはならないもんだかもしれずみにつまされますね。

  • コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です