こんにちは、ブルーベル代表 市村幸美です。
介護職に必要な高齢者の方への基本的な医療知識セミナーで頂いた質問の中から、ブログ記事でも取り上げたいなと思ったものをご紹介していくシリーズです。私個人の見解になりますので、その旨をご了承ください。
今日取り上げるご質問はこちらです。

SpO2が少し下がっただけで呼吸苦を訴える方がいます。救急搬送する目安があれば知りたい。
ご質問ありがとうございます!
最初に書いておきますと、以前はよく呼吸の苦しさの訴えを「呼吸苦」と呼んでいましたが、今は主観的な訴えは「呼吸困難」と表現するようになっています。客観的なデータでみる場合は「呼吸不全」と呼んで区別しています。
「SpO2」と「自覚症状」を分けて考えてみましょう。
まずSpO2について生理学的なことも含めて簡単に説明します。
肺から取り込まれた酸素は、ヘモグロビンと結合して酸素の提供を待っている全身の細胞に運ばれます。動脈血にはたくさんの酸素が含まれていて、酸素が少ない場所にくると酸素はヘモグロビンから離れて細胞に提供されます。心臓に戻ってくる静脈血には酸素が少ないのはこのためです。

SpO2とは、動脈血のなかを流れているヘモグロビン(赤血球)の何%に酸素が結合しているか、経皮的に調べた値です。
【参考】
パルスオキシメーターとはどのようなものですか? 一般社団法人日本呼吸器学会
SpO2の正常値は、文献によって幅がありますが96 %以上と示しているものが多いですね。また95 %未満は呼吸不全の疑いがあり、90 %未満は在宅酸素療法の適応になるという指標があります。
ということで、95%未満になったら何らかの異常を疑ったほうがいいよというのが原則になります。
ただ、高齢者の場合はその人のベースラインとの比較も大切なアセスメント材料になってきます。ベースが低い高齢者では94%くらいまでは様子をみていいという医師もいます。
持っている病気によっても変わります。例えばCOPDであればCO2ナルコーシスの予防のため、SpO2を低めにすることもあります。
※CO2ナルコーシスの説明は長くなるので今回は省きます。
COPDなど何らかの肺疾患があって、あえてSpO2を低めに設定している場合以外は、92%以下になったら医療機関への搬送が必要になってくるというのがひとつの目安かなと思います。
どうしてもパルスオキシメーターは皮膚を通して調べるものになりますので、末梢の血管が収縮してるときや、あまり性能がよくないパルスオキシメーター(笑)だと、「本当にこの数値?」という数値で出ることがあります。

呼吸数や顔色などの客観的データ、また自覚症状(主観的データ)などと照らし合わせて分析することも必要です。
ここまでで結構長くなってしまいました。。。もう少しお付き合い下さい。
次は自覚症状です。
これはセミナーのときには話せなかったのですが、SpO2が正常でも苦しさを感じる場合があります。
最初に書いたように、ヘモグロビンと酸素が結合しているものが何%あるのか、を調べたものがSpO2ですので、そもそもこのヘモグロビンの量が少なければ細胞に酸素が提供できず息苦しさを感じることがあります。
昔、貧血で輸血を受けた経験があるのですが、この時はSpO2は正常でしたが、少し動くだけで苦しかったのを覚えています。
また、他にも心臓のポンプ機能が弱っていて血液をうまく送り出すことができなかったり、臓器への提供が妨げられるようなことが起こったりすると、SpO2が正常でも苦しさを訴えることがあります。
そして呼吸は心理的なものの影響も受けやすく、抑うつや不安との関連も強いことがわかっています。
長くなってきたので、このあたりで終わりにしますが、本当は呼吸のメカニズムなど生理学的な基礎をわかっておいたほうがいいと思いますので是非調べてみて下さい!
ここまで読ませておいてって感じなのですが、日本呼吸器学会から出ている冊子が私の説明よりも、ものすごくわかりやすいです!(笑)。是非ダウンロードして現場に置いておくことをお勧めします。
↓
よくわかるパルスオキシメーター:日本呼吸器学会

参考になると嬉しいです。
ご質問ありがとうございました!

では、またー
お師匠様
いつもありがとうございます。
日本呼吸学会の資料、大変詳しく記載されています。
参考になります。
本日のニュース
https://mainichi.jp/articles/20191227/ddm/013/040/016000c
これは参考になります。来年現地を訪問する(2020年の目標の一つにします)
毎日新聞のLINEアプリだと無料で全文読めるのに、PCだと有料?
こちらはまだまだ仕事ですが、本年は大変お世話になりました。
良いお年をお迎えください。
吉村さん
今年もありがとうございました!ブログにもたくさんコメント頂き、励みになりました。
吉村さんの今後のご活動も楽しみにしています。
良いお年をお迎えくださいませ。