短期記憶なのか?近時記憶なのか?

こんにちは ブルーベル代表 市村幸美です

1月は雪が少なかったのですが、ここ数日はけっこう降ったみたいで、家に引きこもっている間に積もっていました

さて、今日は

短期記憶と近時記憶の違いについてお伝えしていきます

よく「認知症なので短期記憶が・・・」みたいなワードを聞きます

でも、医学書などでは短期記憶障害ではなく、近時記憶障害という言葉が使われています。

どっちが正しいのか?

結論から言うと認知症ケアの分野では近時記憶障害が正しい表現になります

ただ、介護保険の分野では短期記憶でも間違いではないかも・・・という微妙な側面もありますので、後ほど補足します

ここからは、短期記憶と近時記憶の違いについてと、なぜ短期記憶という用語が使われるのか?についてお伝えしていきます

心理学と臨床医学の記憶の分類が違う

まず、ここを押さえておく必要があります

医学っていろんな分野があって、それぞれに定義が違ったりします。私もいつもこれに混乱させられています・・・

心理学と臨床医学の記憶の時間的な分類がじつは違うんです

心理学では「短期記憶」「長期記憶」にわけています

しかし、臨床医学では「即時記憶、近時記憶、遠隔記憶」という分け方をしています

さっくりの時間的な違いがこちらになります ↓

記憶のメカニズムを復習してから

即時記憶と近時記憶をもう少し詳しく説明すると、こうなります ↓

遠隔記憶は近時記憶よりも保持時間の長いものをさし、こちらもはっきりとした定義はありません

ちなみに

HDSーRの設問4で「桜、猫、電車」と復唱してもらうのが即時記憶

設問7でこの言葉を思い出してもらうのが、近時記憶ということになりますね

設問7は「遅延再生」ともいわれ、ここができないとアルツハイマー型認知症の可能性が高いと言われています。

また、心理学でいうところの「短期記憶」と、臨床医学の「即時記憶」は全く同じではなく、短期記憶は1分以内を指すようです

もうひとつ付け加えておくと、アルツハイマー型認知症の記憶障害は記銘力の障害が特徴になります

エピソード記憶は内容の種類

また、よくアルツハイマー型認知症はエピソード記憶が欠如するっていうけど、エピソード記憶はどこに入るんだ?と思いません?(私は思っていました・・・)

エピソード記憶は、時間の分類ではなく、内容の分類の用語になります

ここまでを整理すると

1.記憶には時間的な分類と、内容による分類がある

2.時間的な分類は心理学と臨床医学では異なる

という感じです

アルツハイマー型認知症の記憶障害は?

先ほどの図にも記載しましたが、アルツハイマー型認知症の記憶障害は、

記銘力が低下する

時間的な分類では近時記憶障害

内容の分類ではエピソード記憶の障害

になります

介護保険の主治医意見書の課題

さて、最初の部分でただ「介護保険の分野では短期記憶でも間違いではないかも・・・」と書いたのは、介護保険の主治医意見書の3-(2)の部分を見てみると・・・

ここが「短期記憶」になってるんですよね

松田実先生は、論文のなかで

AD の主要症状である記憶障 害は近時記憶障害が主体であるから,介護保険主治 医意見書の「短期記憶障害」は「近時記憶障害」の 誤りであり,早急に改定されることが望まれる。

と書かれています

全文はこちら ↓
アルツハイマー型認知症の言語症状の多様性

この辺りも混乱を引き起こしている原因のひとつだったりするのかもしれませんね

今日は短期記憶と近時記憶の違いについてお伝えしました

少しでもお役に立てると嬉しいです!

では、またーー


↓募集中です!

2 件のコメント

  • お師匠さま

    いつもありがとうございます。

    記憶という言葉の定義を知るのは
    ケアをすることにおいて、とても
    大切だと感じます。

    その方の自立や尊厳、権利擁護の意味でも
    大切。

    いろいろ教えていただき、感謝です。

  • 分野によって定義が違うのが、難しいところですよね。
    こちらこそ、いつもありがとうございます!